■ もう、40年も前になるのか、・・・。
「あなたがかんだ こゆびがいたい」
・・・と、歌っていた。
■ 何も、こう歌っているからといって、歌手自身が小指を咬まれたわけでもないし、痛いわけでもない。
■ 作詞は、有馬三重子、鈴木淳作曲、伊東ゆかり唄、「小指の想い出」だ。
■ 「きのうのよるの こゆびがいたい」と毎日歌っていても、・・・。毎日咬まれているわけでもない。
■ 聞く方も、「ええっ、昨日もかいな、またかいな、ようやるな」と思うわけではない。
■ 作詞家は、ある思いを歌詞としてまとめ作り上げる。
■ 作曲家は、その思いのイメージを固定化し、ふくらみと現実感をもたせる。
■ 歌手は、それを、あたかも自分のことのように歌う。
■ 人は、それを聞いて、歌う。
■ 歌謡曲だから作り物、のはずだが、その思いが、まるで自分のことのように錯覚する。
■ その結果、レコードが売れたのだ。
■ ある時代、人が歌にこころを寄せたことがあった。
■ 今はどうなのか、・・・知らない。歌もほとんど知らない。
■ 「つくりもの」のなかに自分をどう表現するか、ということ、これは意味がある。
■ 「つくりもの」でなく、ナマだからいい、とは思わない。
■ 泣き叫び笑い転げる、その、むき出し状態に「詩」はない。
■ ガンガン、ガンガン拡声器の音量を上げて、わめいている。
■ 歌とは思えない。感情のほとばしりも感じられない。
■ わめくだけでも、たまには、肉声でやってみろ、・・・つうの。
■ 普遍性もなければ「こころ」もない。
■ 作り上げることが重要だ。
■ 俳句の場合、
■ 自分をどう句に作るかではなく、「つくりもの」の中にどう取り入れるか、という発想が重要だ。
■ 悪戯に、こんな句を作ったことがある、・・・。
かむこともあいのひとつやかすみそう 遊水
■ 中年の僕にはよく分かるが、こんな句は、なかなか作れませんなあ、と、真面目な顔して、言う。
■ なるほど、想像たくましく、・・・ですな。
■ 生々しく、捉えすぎだ。
■ ただ、愛の形には色々あるよ、ということを句にしただけなのに、・・・。