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■ 「秋といえば、ドングリ拾いだ」

■ 「さあ、行きましょう」

■ 若い保母や、女の先生に引率されて、園児や児童とママ達が嵐のようにやって来た。

■ この公園のドングリが、拾い尽くされるのに長い時間はかからない。

■ 若い保母やママ達の頭の中のドングリとは、こんなものなのだ。何か哀しく、恐ろしい。

■ 鳥の写真を撮るどころではない。

■ さっきここに、アオバトがいたよ、ちょっと暗かったけど撮った、・・・。

■ しゃがんで、そんな話などしていると、唐突に声がした。

■ 「本当にここにリスがいるの?」

■ 女の子だ。手には、既に、ドングリがいっぱい入った、いわゆるレジ袋を提げている。

■ なるほど、これは、いい質問だ。

■ しかし、それについて話をする前に、その子は友達と一緒に駆けていった。

 

■ リスはドングリが好きなんだ。知っているだろ。このまえ、絵本で読んだよね。

■ だけど、皆が、全部拾っちゃったから、ドングリはもう残っていない。

■ だから、リスは、ここには、もう来ないんだ。

■ 来たくても、食べ物がないから来ないんだ。

■ リスだけじゃないよ。

■ カケスやイカルやアオバトだってそうさ。

■ みんなドングリが大好きなんだけど、残ってないから、来ても、すぐどこかに飛んでいっちゃうんだ。

■ 本当は、みんな、この公園が好きなのに、・・・。

■ イカルが鳴くのを聞いたことがあるかい。ときどき鳴いているよ。

■ いい声で鳴くんだぞ。

■ けど、イカルが来なくなると、それも聞けないんだ。

■ カケスはちょっと怖い顔をして、声も綺麗じゃないけど、お洒落な色の鳥だ。

■ カケスは物真似上手だから、キャンキャン犬の鳴き真似もすることがあるんだ。

■ 聞いたことがあるかい。

■ 見たこともないなら、そこの駅のプラットホームに沢山の鳥の絵があるよ、カケスも確かいたはずだ。

 

■ それに、これが、本当は一番大切なことだけど、

■ 「本当は、ドングリって何か知っているかい」

■ 木の実だけど、実って何だか分かるかい。

■ 実は土に埋もれていると、いつか芽を出して、育つと、大きな木になるんだよ。

■ 君達も、大きくなって、お兄ちゃんやお姉ちゃんや、ママやパパのようになるだろう。

■ 人間でいえば、「子供」なのさ。

■ 木は言葉が話せないから、君は木の声が聞けないかもしれない。

■ だけど、「全部は拾わないで」と叫んでいるんだ。

■ 悲痛な叫びなんだ。悲痛って意味が分かるかい。後で、ママやパパに聞いてごらん。

■ 君達は、木の心を分かろうとしないから、木の叫びは聞こえないんだ。

 

■ 若いママ達にも聞こえていない。

■ 来年も、木はドングリを落とすだろう。いつか芽を出してね、と願いながら。

■ だけど、来年も、再来年も、・・・。

■ 人が、「拾って、遊んで、捨てるだけ」

■ ママには、「ドングリよりも、何よりも、うちの子が最優先」だ。

 

■ しかし、「拾って、遊んで、捨てるだけ」

■ この言葉を、頭の中で繰り返しながら、目の前の、可愛い、自分の娘を見るといい。

■ 少し、何かが違って見えてくるかもしれない。

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