■ 2012-03-13
■ よみびとしらず
■ 平家物語、巻第七、忠度都落
■ このくだりは、短いので、読み易い。
・・・。その後世静って、千載集を撰ぜられけるに、
忠度の有様、云ひ置きし言の葉、今更思い出でて哀れなりけり。
件の巻物の中に、さりぬべき歌いくらもありけれども、
その身勅勘の人なれば、名字をば顕はされず。
故郷花といふ題にて、詠まれたりける歌一首ぞ、よみびとしらずと入れられたる。
ささ浪や志賀の都はあれにしを昔ながらの山桜かな
その身朝敵となりぬる上は、子細に及ばずと云いながら、恨めしかりし事どもなり。
■ 「長等山」は掛け詞。
■ 「よみびとしらず」は歌集の撰者が本当に知らない場合もあるが、・・・
■ このように、当り障りのないように伏せる場合もある。
■ 平忠度は薩摩守で、むかし、「ダダ乗り」を「サツマノカミ」などという駄洒落もあった。
■ へええ、知らない、と配偶者は言う。
■ それは、まあ、いい。
■ 撰者自身の歌を入れる場合もある。
■ 千載集には、編者の藤原俊成の歌もあるようだ。
■ これは、必ずしも、自分の歌を入れたいからではなく、歌集の価値を高めるためにしたようだ。
■ 後白河院は和歌には、日頃さして興味もなかったが、院宣が戦乱時に行われたということで、・・・
■ 千載集は「祟りを恐れた」「鎮魂」の勅撰和歌集だったようだ。
■ 従って、その相手が歌の上手ばかりではなかったけれども、撰入する必要性があった。
■ で、それを補う意味もあったようだ。
■ しかし、自分の名を伏せたのは、要らぬ、火の粉がふりかかるのを避けるためでもあったろう。
■ この忠度の歌と「よみびとしらず」について、丸谷才一が詳しく書いている。
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長等山 三井寺 (園城寺)